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Mountain Lionの新機能「AirPlayミラーリング」がリビングのテレビに起こした革命について


*1

要点

Mountain Lionの新機能AirPlayミラーリングの登場で、「Macbook Air→AppleTV+大画面薄型テレビ」というマルチメディアを楽しむ最強のスタイルが完成した。

なぜなら、既存のどんなAV機器(レコーダー、PS3、HTPCさえ)よりも、ウルトラブック(Macbook Air)は素早く目的のファイルにたどり着くことができ、スムーズな操作ができるからだ。

「形態は機能に従う」というデザインの原則通り、
AV機器はテレビ放送やCD/DVDといった古いメディアでの利用を想定しており、
youtubeやHDDに保存したファイルを再生はパソコンのほうが圧倒的に使いやすい。

リビングPC(HTPC)という折衷案もあるが、
解像度(dpi)の違いから大画面テレビでは字が小さくて操作しづらい。

ウルトラブック(Macbook Air)ならダイニングテーブルでさくっと開いて、目的のファイルをワンクリックで再生できる。
その上、AirPlayミラーリングの登場で、シームレスに大画面テレビでコンテンツを楽しめる環境が実現できるようになった。

日系電機メーカーは、どこも「スマートテレビ」だのDLNA対応だの、
ネットワーク連携機能をAV機器に加えることで高付加価値化を狙った商品開発を進めている。
が、複雑な機能になればなるほど、CPU/GPUの超高速処理リソースがあるパソコンのサクサク感にかなうわけもなく、マイコンベースのAV機器では中途半端な操作性しか提供できない。

iPhoneの登場で、ガラケー・デジカメ・PDA・ウォークマン・その他諸々を一網打尽に駆逐してしまったように、
Mountain LionでのAirPlayミラーリングは、これまで大画面テレビの外部入力につなげていたレコーダー等据え置きAV機器一式を在庫地獄に陥れ、スマートテレビを「情弱乙」に貶めるマジパネー機能だった!

録画鯖のコンテンツ消費として、ついに理想的な組み合わせが生まれました。
そう、Mountain Lionならね。
Apple ハイビジョン対応 Apple TV MD199J/A
Apple ハイビジョン対応 Apple TV MD199J/A
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Mountain Lionの新機能

Mac OS X Mountain Lionがリリース。
iOSとの親和性が高まり、icloudや通知センターに隠れて、
存在感が薄めの新機能「AirPlay ミラーリング」こそ、
今回のOSアップデートで一番インパクトが大きく、誇張なしに「リビングに革命を起こした」。
(と、思う。)

AirPlayミラーリングとは?

AirPlayとは?

ipod, iphone, ipad等のiOS端末から、
AppleTV(+Airplay対応機器)に音楽を無線LAN経由で再生するのが「AirPlay」。
AppleTVのアップデートと共に、当初はひっそり登場したAirPlayが、
ipodドックやCDコンポ、ラジカセのニーズを葬りさった。
「リモコンで音量調整・曲送りがボタンひとつで使いやすい」という唯一のメリットを、
iphone+AirPlayはあらゆる面でワンランク上のユーザエクスペリエンス(UX)を実現したからだ。

AirPlay ミラーリングとは?

「音」だけだったAIrPlayに、「映像」までワイヤレス化したのがAirplayミラーリング。
ミラーリングを受信できるのは基本的にAppleTVのみ(+クラックしたXBMC)。
送信側はipadiphoneのみという限られた状況だった。
それが、ついにMountain Lionからはすべてのパソコンから画面をワイヤレスでデュプリケート可能になった。

Windows版Airplayミラーリングの可能性と限界

Intel WiDiというAirplayミラーリングとほぼ同じような機能がWindowsでは先行してあった。
必要な条件も、送信側にSandybridge以降のGPU内蔵CPU、受信側に小型の専用端末と酷似してるので、
GPUエンコーディングで高速にH.264圧縮して、無線LANで飛ばすという仕組みはまったく同じだろう。

ただ、Intel WiDIは、ハードとソフトに致命的な制限が2つあった。
なんとIntelWiFiチップセットと専用ソフトウェアが必須。
結果的にデスクトップPCは問答無用で利用不可。ノートPCも対応した高価なモデルに限定されてしまった。
MacではOSに標準搭載されているし、Wifiチップセットの制限はない。*2

マイクロソフトIntelに圧力をかけて、ワイヤレスチップセットの制限を外させ、
Windows8でIntel WiDiを標準搭載させる可能性は非常に高い。
そうなれば、Windowsノートがリビングで使えなくはないが、
マルチタッチジャスチャーでの操作にはMac OSに一日の長があり、
特許関係で、Windows8のRetroスタイルは不利にあると思う。

それにwindows8ならいざしらず、現時点では使いやすさでMacしか選択肢がない。

使いやすさとデザイン

Macとその他を超えられざる壁は「使いやすいさ」にある。

「形態は機能に従う」

「形態は機能に従う」というデザインの有名な原則がある。
例えば、テレビのリモコンは選局のための1〜12ボタンが押しやすいデザインになっている。
ソニーはレコーダーやPS3でクロスメディアバーというUIを採用していて、
これはこれで使いやすいが、DVD・BDの再生とちょっと見て消しのライトユースに限った話で、
膨大な録画ファイルがあるとリストが縦長になって使いづらい。

ウィンドウシステムとポインタ(マウス)は、
膨大なファイルを直感的に操作するために、現時点でのベストGUI
ただ、家電のようにリモコンだけでは操作ができず、
キーボード・トラックパッド・液晶が必要になるのがデメリットだった。

かつて、大画面薄型テレビでのPC利用を想定したリビングPCとかHTPCというジャンルが注目された。
ソニーの「VGX-TP1」、シャープの「Mebius TX PC-TX26GS」など。
今でもHTPC用自作ケースやMacmini流用などの声は聞く。
静音・高速起動の小型PCをテレビにつなげ、Bluetoothキーボードとマウスでスタイリッシュに操作、という夢のシステムだった。
しかし、だ。
ギーク諸君の愛したHTPCは失敗した。
なぜか!?
解像度が合わないからだ。
テレビはPCモニタよりずっと離れて視聴するため、
パソコンをつなげただけだと、字が小さくなる。
WindowsはOSからdpiを変えることができるが、大きくしすぎると、
メニューの文字が隠れるなど不具合多発し、非実用的。
解像度を下げたら見やすくはなるが、画質が犠牲になり、
動画視聴を考えたら主客転倒。

パソコンの操作にはキーボード、トラックパッドだけでなく、
適切なサイズと距離のモニタが必要で、
それを極限までコンパクトにした端末がウルトラブックだった。
Appleはパイオニアとして、アプリのフルスクリーンやマルチタッチジェスチャなど、
ユーザインタフェースを洗練させていった。
OS X Lion搭載MBAは、単体として使いやすさの頂点を極めた端末だった。

これから本当のマルチメディア消費が可能になった

マルチメディア化とは?

音楽もビデオコンテンツも、かつてはラジオ・テレビ放送とCD/DVDに媒体が限られていた。
しかし、今やradikoitunes storeYoutubeニコニコ動画のようなネットサービスが普及し、
結果としてコンテンツは「フィルム」から「ファイル」という概念に変化した。
「マルティメディア化」のポイントは、コンテンツがアナログ的なフィルムからデジタルのファイルに進化したことで、これまでの媒体の制約がなくなった所にある。

マルチメディア時代の夜明け

ワンセグ、BS,CS,CATV,スカパー、youtube、第二日本テレビ等々「送り手」のメディアはどんどん増えた。
じゃあ、新聞・雑誌で言うとおり「マルチメディア時代」の幕開けしたのかというと、
実はまったく違う。
受け手の消費者は、ラジオにテレビ、ワンセグはケータイ、スカパーはSTB、録画はレコーダ、CDはコンポ、ユーチューブはノートパソコン・・・と膨大なメディアにあわせて、
端末もまた、とっかえひっかえ必要になっていった。
送り手の都合ばかりで、肝心の消費者が置いてけぼりの状態で、
「マルティメディア時代」はまだまだ夜明けを迎えていない。
NOTTVが最たる例だ。誰が見るんじゃい。

電通リサーチなぞに頼るまでもなく、
やっぱりリビングのテレビでは地上波放送がなんとなく付けっぱなしだし、
ユーチューブはネットサーフィンのついでに見るくらい。
それが大多数のメディア消費であって、
「ネットニュースがあるからテレビ見ません」なんて人は、
未来永劫ロングテール効果の棄却域でしかなかった。
スポット収入の低下は、たんにコモディティ化と事業の成熟化の結果にすぎないと思う。
にもかかわらず放送業界の事業再編が製造業にくらべておだやかなのは、
規制に守られ市場原理が弱いからであって、
ルパート・マードックのような存在は歴史の必然ではないか。

MBAとAppleTVがリビングのATフィールドをぶち破る

音楽も写真も動画も、コンテンツ自体は個人がHDDにファイルとして取り込ハードルは低くなった。
まだマニアックとはいえ、個人用のNASが売れているのが証左だろう。

コンテンツを、リビングの大画面テレビで見たいというニーズは根強く、
パソコンとの親和性の悪さから、黒物家電はリビングという聖域を保ってきた。

Appleは、
黒物家電に偽装したAppleTVをリビングに送り込み、
MountainLionのリリースで、
ついに黒物家電最後の砦を打ち破ることになるだろう。

まだ私も使い始めてほんのすこしだが、
映像をテレビに映しつつ、
Macbook Airは「巨大なリモコン」として使うスタイルの、
意外なほどの使いやすさに驚いている。
Wii Uもコントローラに巨大なタッチスクリーンを搭載するUIを採用だというし、
「リモコン」のターミナルとしての機能を考えたら、いままで大画面液晶がなかったのが不思議なくらいだ。*3

なにがすごいって、
大画面テレビで見る上、いまだかつてなく使いやすく、
その上、バラバラになっていた各種メディアの再生機器を、
すべてMacBook Air経由に1本化できてしまう。

たしかに、MacBook AirとAppleTVはそう安くない買い物だが、
スマートテレビ、レコーダー、HTPCネットブックをまるまる飲み込んでしまった付加価値を考えたら、
十分すぎる価値がある。
そして、唯一の対抗馬、Windowsウルトラブックの安値攻勢にも、
洗練されたUIで鉄壁の競争力を持っている。

感想

MacとAppleTVのおいしい関係は、
「多様なメディアから見たい情報を選んでストレスレスにアクセスできる」
そんな本当のマルチメディア時代を実現させる力を秘めていると感じた。
マルチメディアもユビキタスも概念はずっと前から言われてきた。
それをweb2.0とかノマドとパラフレーズするのは広告屋に任せておけばいいと思う。
もっと大切なのは、AirPlayが起こすだろう革命の5W1Hを伝えることだと思い、
微に入り細に入りまとめてみた。

過去には、家庭用ビデオデッキが、テレビの録画という付加価値を生み出し、
棚の付いたテレビ台など文字通りリビングのスタイルを変えていった。
将来、ライフスタイルを変えるようなホームAVのテクノロジーとして、
私はDLNAHDMIのワイヤレス化に注目していた。
DLNAはすでに記事を書いていたが、
HDMIをワイヤレス化については、ロケフリやソニーやシャープ、パナソニックのワイヤレステレビ、intel WiDi、amimon WHDI、WirelessHD、WiGig、IEEE 802.11ac等々、ネタを暖めているところだった。
Appleがやってのけてしまうとはおったまげた。
リビングくらいは、PS3とロケフリを擁するソニーが最有力候補だと思っていた。
革命はそんなものかもしれない。
世界初の共産主義革命は、マルクスのいたドイツでもイギリスでもなく、ロシアで起きたのだから。

リビングのテレビでも、ワイヤレスにマルチメディアを楽しめるようになれば、
もう棚の付いたテレビ台はいらなくなるだろう。*4
外部機器自体が消えることで、配線がネックだった壁掛けスタイルや壁寄せスタンドなど、
本来、薄型テレビにもっとふさわしいレイアウトが一般化していくだろう。

同じ理由からAppleTVの機能を丸々内蔵し、
LGなりsharpのIGZO液晶と組み合わせた
アップル謹製スマートテレビ「iTV」のリリースも秒読み段階だろう。

あとがき「メディアはもっともっと面白くなる」

ちょうど、ロンドン五輪サッカー男子1次リーグ スペイン対日本戦の前日で、
テレビのスポーツコーナーでは予想で盛り上がっていた。
「1:0で日本が勝つ!」
「いやいや2:0でしょう」
どの局のどの出演者も、日本が勝つ前提でのコメントばかり。
嘘っぱちだらけで嫌気がさした。
「どうせかなうわけない」という前提があったからこそ、
まさかの「夢」につながるんだ。

いつしか「共感」の役割がキー局から消えてしまった。
テレビもネットも、それぞれ足元を揃えて消費者が評価できるようになったとき、
メディアはまだまだ面白くなる。

*1:TV Movies Of Our Lives

*2:Mac book AirはBroadcom製チップセットBCM943224PCIEBT2。そもそも有線利用可

*3:そりゃ、コストがかかるから、当たり前といえばそれまでだが。

*4:Xboxなどゲーム機はべつとして