ソニーのポタアンPHA-1とiPhoneの関係がとてもけしからん件について
ソニーのポータブルヘッドホンアンプPHA-1はウォークマンとはアナログ接続しか対応していないのに、iPhone/iPodとはデジタル接続できるそうだ。けしからんゾ!
「あん・・・いいよ・・・すっごく音質いい。iOSのデジタル出力でアタシのDACをぐちょぐちょにして」
あまりにけしからんので、iPhone5内蔵ヘッドホンアンプとPHA-1のスペックを比較してみる。
iPhone5のオーディオ性能
iPhone5では338S1077というCirrus Logic製のDAC・ヘッドホンアンプ一体型ICが使われている。
こいつのスペックは不明なので、Cirrus Logicの似たようなIC CS42L73でスペックをテキトーに類推する。*1
ヘッドホン出力したときの性能32Ω
- ダイナミックレンジ:94dB
- 歪み率(THD+N):-81dB
- S/N比:不明
PHA-1の性能
PHA-1は贅沢な部品を惜しげもなく使っている。スペック厨も納得。
ウォークマンはそもそもデジタル出力できない。iPhoneはアップル様とライセンス契約すると、デジタル出力できる。PHA-1はiPodのデジタル接続に対応。ちかごろのソニーはDTCP-IP対応といい、アップルへのお布施が止まらない。
walkmanの高級DAC一体型フルデジタルアンプS-masterはたしかに悪くない。だけど贅沢な個別部品を組み合わせたPHA-1には及ばないこと。だってS-masterが優れているなら、PHA-1のDAC/アンプもS-masterを使えばいいのだから。ここはソニーの素直な判断に「いいね」をポチろう。
オペアンプ:TI(旧ナショナルセミコンダクタ) LME49860
PHA-1の残念なところ。「非同期動作」とwalkmanへの未練
PHA-1は非同期動作に対応しているのに、詳細仕様が書かれていない。
おそらくデジタル出力ができないwalkmanへの配慮か?
非同期動作だけどインチキなクロックを使っているという疑いもある。
まず、カタログにはノイズの影響を受けない非同期動作だと明記されている。
USB Audio対応(96kHz/24bit)
商品の特長 | PHA-1 | ヘッドホン | ソニー
非同期方式(Asynchronous)を採用することでPC側のジッターから分離された高精度なクロックによる正確なD/A変換を実現しました。また、96kHz/24bitのフォーマットに対応することにより、それらの高音質コンテンツの実力をあますところなく再現します。
USB Audioの非同期方式(Asynchronous, アシンクロナス)に対応するにはWindowsでは専用ドライバのインストールが必要になる。しかしPHA-1ではUSBドライバを配布していない。つまりPHA-1はジッタの影響受けまくりのWindows標準の同期方式(シンクロナス)で動作している。
じゃあ、iPhoneと接続しても非同期なのか?これは不明。アップルが仕様公開していないから。アシンクロナスモードやアダプティブモードなど同期方式でも、DACに綺麗なクロックを入れてあげれば問題はない。でもソニーのカタログには一切そうした記述がないから不明。一見、PC(Mac)と接続したときしか非同期動作しないように書かれている。
iPhoneでも最高音質!と書くと社内で角が建つから、walkmanに配慮したんだろう。
残念ついでにもうひとつ。
非同期動作がメリットになるには「PCやiPhoneのクロックが汚い!」という前提に加えて、「PHA-1のクロックが高品質」という前提が必要だ。
だから水晶(XO, TCXO)やPLLも言及するのがハイオーディオでは一般的だ。
PHA-1は「基板のノイズ対策しました」というだけでクロックの品質には一切言及がない。DACやヘッドホンアンプはそこそこ高級な部品を使ったけど、むやみにコストがあがらないように見えないところは手を抜いているのだろう。コスパとの兼ね合いは難しいけど、次のモデルでは32bit DAC+TCXOみたいな「そこまでやるか!」と驚くほど過剰なハイスペック品を出してほしい。値段据え置きでね!
と思っていたら、すでに32bitDACを使った超ハイスペックなポタアンがあった。
デザインとブランドでソニーを選ぶか、スペックでフォクテックスにするか、悩ましい。
参考
• Apple 338S1077 Audio CODEC. This is a wafer-scale device by Cirrus Logic. They have long held this private-label package with Apple.
Inside the Apple iPhone 5 | Recent Teardowns
• Apple 338S1117 Cirrus Audio Chip
ナショナルセミコンダクタ社のLME49860は2007年に発表された比較的新しいオペアンプでオーディオ用途としての性能が大変優れている。
WiseTech :: OPAMP
USB接続で要となるUSBドライバーは非同期で接続できる独自のチップを採用していることも注目である。
PHA-1開発者Interview | 開発者インタビュー | ポータブルヘッドホンアンプ | The Headphones Park | スペシャルコンテンツ | ヘッドホン | ソニー
(中略)
USB接続で重要となるのがこの非同期対応という点だ。PCからの信号をUSB経由で受け取る際、一般的に送り出し側のクロックを基準として後段のDACまでを同期させているが、この場合PCで発生した歪み=ジッターをそのままDACで復元してしまうデメリットが起こってしまう。そこでDAC直前のドライバー部で一旦その連続性を断ち、メモリーにデータを貯め、ポータブルヘッドホンアンプに内蔵する高精度なクロックで再度生成し直すことでジッターを低減できるのだ。
USBオーディオクラスは、以下の三つの転送方式から一つを選択します。
http://www.nakata-jp.org/computer/howto/audio/usbprotocol.html:title>
• シンクロナス転送
• アシンクロナス転送
• アダプティブ転送