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情熱大陸 近代五種 黒須成美

2012年06月24日放送
ロンドン五輪近代五種日本代表
「血を吐くまで練習しろ!」猛特訓を経て鬼コーチとロンドンへ。
20歳の成長株が見せた涙と覚悟に密着
 オリンピック種目の一つ『近代五種』はフェンシングと水泳、コンバインド(マラソンとピストル)、乗馬という5種類を一日でこなす鉄人レースだ。

概要

嘘だとわかっていても、韓流ドラマで見慣れた美男美女とモデルルームの世界はかけらもなく、
高度成長前の日本のような喧騒にまみれた韓国で、
震災をきっかけに、いくばくか受け身ながらも、厳しい環境でもがき続けるアスリートの日常を切り抜いた、一枚のポートレートのようなドキュメンタリー。

内容は薄いけど、生ぬるい日常に喝を入れたいとき、努力を続けているのに結果が出ずに苦しんでいるとき、見ると共感できる「情熱」は伝わってくる映像。

感想

震災で練習場をなくした黒瀬選手が、
親交のあった韓国のコーチに招かれて、韓国に渡り、過酷な練習に耐えるドキュメント。

フィギアスケートの荒川静香や新体操の田中理恵など、
「アイドルチックに女性アスリートの葛藤、しなやかさ、強さ」を切り取るのが大好きな情熱大陸のこの手のシリーズのなかでは、異色な作品だった。

見所は、1960年代の日本のように、容赦ない猛烈なシゴキ。
個人競技ゆえ、コーチの激に一切の逃げ場はなく、ふがいなさに涙するカットも多々。

NHKのドキュメントと異なり、取材期間はおそらく1〜3ヶ月程度。
番組はオリンピック前哨戦のワールドカップまで。
試合前からずっと調子が伸びやなんでおり、試合も予選24人中22位で惨敗して終わる。
スポーツドキュメントには欠かせない「挫折からの飛躍」が皆無。
締め切りと予算の都合で撮って出しましたといった感じで、
ちゃんとした一本のドキュメントにするには、やっぱりオリンピックまで密着が必要。
そこでブレークスルーが起きれば言うことはないし、
仮に戦績が振るわなくても、競技の引退なり、心の葛藤が見えてくるだろう。

もうひとつの見所は、韓国での競技環境や生活シーン。
鬼コーチは、韓国の実業団チームの監督のかたわらで、黒瀬も指導している。
指導料をもらっているとはいえ、ライバルの日本の選手を指導するのは大したもので、もっと深く掘り下げられる感じがあった。
また、韓国のリアルな風景も面白い。
韓国はオリンピックのメダル獲得のため、
近代五種のように体格差が関係なく競技人口が少ないマイナー競技に対して、
戦略的なスポーツ奨励政策を行なっている。
子供の頃からの選抜や体育学校の設置、兵役の免除、そしてメダルを獲得した選手への年金制度。
韓国の選手は文字通り「命を懸けて」競技をやっているわけで、
アマチュアが前提の日本人とは眼の色が違う。

黒須成美

1991年茨城県出身。同じく近代五種選手の父(黒須秀樹)の影響で中学生からで本格的に近代五種を始める。2010年に初開催の第1回女子近代五種全日本選手権大会で見事初代優勝。翌年の第2回女子近代五種全日本選手権大会でも連覇し圧倒的な強さを見せた。2011年のアジア選手権では6位に入り、ロンドン五輪出場権を獲得。

制作スタッフ

演出:長南武
ナレーター:窪田等
音効:中嶋尊史
編集:舛本賢治
制作協力:AZUSA
プロデューサー:福岡元啓、武藤靖