それでもDLNAをロケーションフリー化する方法
要旨
自宅に置いてあるDIGAで録画したお気に入りのテレビ番組、
外出先や帰省先で見れたら素晴らしいと思いませんか?
ズバリ、できるんです。
しかも、ソニーのロケーションフリーや
SlingBOX、VULKANO FLOWを使わず、
DLNAを使って。
そう、フルハイビジョン(1080p)&3D対応です。たぶん。
DLNAサーバ機能を搭載したレコーダー(DIGAやREGZA、AQUOS、ソニーのレコーダー、RecBOX等)と、
DLNAクライアント機能を搭載した機器(PS3やDixim、シャープ製スマートフォン、BRAVIA、Viera、REGZA、AQUOS等)は、
ルーターをまたいだり、ましてWAN越し(インターネット越し)に使うことは
通常できない。
しかし、ルーター等でVPNを構築すると、
WAN越しにDLNAを使うことができる。
ただし、設定はかなり面倒くさい。
自家製手作りチャーシューと同じくらいの難易度と時間がかかる。
それと、2拠点がNTTの東西をまたぐ場合は
一気に難易度があがる。
例えるなら、満漢全席レベル。
DLNAとは
家電製品をネットワークで連携するための規格。
厳密には、既存の規格(UPnP)の組み合わせているだけなので、
「規格」ではなく「ガイドライン」。
将来は、冷蔵庫やエアコン、洗濯機等々、あらゆる家電がネットワークで連携して、
消費電力の管理やらリモート操作やらができることを想定しているらしい。
もっとも、現時点でDLNAに対応した機器といえば、
録画機とテレビ、そしてPS3のようなゲーム機とDLNA対応ソフトがインストールされたパソコンやスマートフォンのみ。
録画機とテレビに関しては、DLNAはデファクトスタンダードになっているが、
家電各社はDLNAという名称を表立って使うことはあまりない。
ビエラリンク、ブラビアリンクとの違い
テレビ、レコーダーで「リンク」といえば、
CMでお馴染みのビエラリンクやブラビアリンクといったフレーズに耳なじみがある。
ビエラリンク、ブラビアリンク、アクオスファミリンク、リアリンク等々は、
すべてHDMIによる機器制御の規格。
HDMI CECという電源オンオフの連動などに加え、
各社自社製品で囲い込むための無駄な機能をつけて、
好き勝手な名前をつけてる状況。
マーケティングの都合上、DLNAと似たような機能ができるように宣伝されたり、
実際DLNAの機能も含めて「なんちゃらリンク」と紹介されがちだが、
基本的にはまるっきり別物
ビエラリンクはHDMI、DLNAはLANケーブルを使った通信方式。
ロケーションフリーとは
インターネット回線を通して、テレビの映像を見ることができるソニーの製品郡。
「エアボード」の後継品。
「ソニーらしい」画期的な製品だったが、
著作権のからみで日本では発売終了。
米国ではほそぼそと売っているようだが、2011年時点では在庫限りの模様。
類似品としてSlingbox、VULKANO FLOWがあり、
現在も発売中。
e-frontier¥ 30,815 |
課題
DLNAの問題をひとことでいえば、
「どこでもテレビが見たい!」という要望に
DLNAは一見答えているようで、
実は全然使えないクソ規格だということ。
DLNAとロケフリの違い
最初からインターネット越しに使うことを想定している
ロケーションフリーと異なり、
DLNAはあくまで家庭内LANでの使用に限定した規格。
(コンテンツホルダーと癒着した家電メーカー側がいらぬ配慮をしたため)
WAN越しは無論、
同じLAN内であっても、ルーターが2重(2段)になっていると使えない。
想定されるケース①家が広い
ソフトバンクがiPhone利用者に無料でバラまいたFONのWiFiルーターのような産業廃棄物でもない限り、
11n準拠の無線ルーターが1台あれば、
1DK程度のアパートなら、十分カバーできる。
ただ、2階建てや母屋と離れがあるような家であれば、
ルーターを複数置くのがむしろ普通だろう。
すると、
「リビングにあるDIGAの番組が、寝室のテレビでも見れますよ」
と店員に勧められて買ったのに、
部屋のビエラからはなにも映らないという悲しい結果になる。
想定されるケース②LANで使えるならWANでも使えると思い込む馬鹿
CMやパンフを見て、
「IP通信で映像を送るなら、
自宅と親戚の家、あるいは海外の家でもネット越しで見れるハズ!」
と思うかもしれない。
むろん、無理。
構成例
例えば以下のような構成だとDLNAは使える。
【ネット回線】
|
【ブロードバンドルーター(Aterm等)】─【DLNAクライアント(Viera等)】
|
【DLNAサーバ(DIGA等)】
しかし、以下の構成では使えない
(無線ルータをブリッジモードにしなければならない)
【ネット回線】
|
【ルーター】─【DLNAクライアント(Viera等)】
|
【無線ルーター】
|
【DLNAサーバ(DIGA等)】
DLNAの仕組みと2重ルータで使えない理由
一般的なアプリケーション(Windowsのファイル共有等)なら、
ルータのNATやNAPTの設定次第で、
2重ルータでも使うことができる。
しかし、DLNAはUPnP Device Architectureというプロトコルで
DLNAサーバとDLNAクライアントを見つけており、
マルチキャストパケットが届く範囲でしか使うことができない。
例えばサーバのローカルIPアドレスが192.168.1.2で、
クライアントが192.168.1.3ならDLNAが使えるが、
サーバが192.168.1.2で
クライアントが192.168.0.2だと、
マルチキャストパケットが通常は届かないため、DLNAが使えない。
マルチキャストパケットを中継するには、
「IGMPプロクシ(IGMPプロキシ)」機能が必要だが、
ヨドバシカメラで売っているような
普通のブロードバンドルーターでは、IGMPプロクシ機能を持っていることはまずありえない。
地上アナログ放送時代のソリューション
海外赴任者が懐かしくなるものといえば、
白いご飯に味噌汁、そして民放の日本語のテレビ番組。
録画したテレビ番組をネット経由で
離れた場所(家)で見る方法は、
あの手この手で色々な手法があった。
①PCで録画サーバ
パソコンでテレビを録画し、
そのファイルをファイル共有なり、
FTPサーバなりでリモートアクセスする方法。
地上デジタル放送でのソリューション
アナログ放送時代のソリューションの有効性
ケーブルテレビやひかりTV、スカパー光では、
2015年3月まで、アナログ再送信を行なっている。
なので、その気になれば、ほとんどの家庭で
相変わらずアナログTVチューナーを使って録画することができる。
また、ロケーションフリーにはビデオ入力端子と学習リモコン機能があるので、
デジタル対応機器も使える。
地上アナログ放送が未だに受信できるならば、
地アナ時代の方法で全く問題ない。
ただし、画質に満足できるならば。
地デジ画質(ハイビジョン)でのロケーションフリー
使いやすくてコストも安く上がるのが、アナログ放送のロケフリ術だが、
画質ばかりはどうしようもない。
それに、ハイビジョンの画質に目が慣れると、
アナログの解像度では、物足りない。
①PCでの地デジ録画
アースソフト¥ 21,800 |
地上デジタル放送にはDTCP-IPという著作権保護機能が付いている。
よって、ヨドバシカメラで売っているような
パソコン用地デジ録画機で録画したテレビ番組は、
基本的に録画したパソコンでしか見ることができない。
そして、PT2のような無反応機と呼ばれるチューナーや、
D端子出力やHDMI出力をキャプチャできる機器を使えば、
どのパソコンでも録画した番組を見ることができる。
ただ、こうした「アングラ」系のパーツでは、
映像の圧縮機能が付いていない。
大手メーカー製BDレコーダーはもちろん、
IODATAやBUFFALOのようなメーカ製キャプチャカードでも、
映像をH.264に高速エンコードする専用ICが付いているため、
ハイビジョン画質でもそれなりのファイルサイズにすることができる。
無反応機やキャプチャカードでは、
良くて放送波そのままのMPEG2-TS、
ひどい場合は無圧縮AVIで、
いくらHDDがテラバイト級でも、
あっという間に容量を消費してしまう。
そしてPC側エンコードするにしても、
最新のCore-i7環境でやっと等倍(1分の映像をエンコにするのに1分)、
またspursengine搭載カード等GPUエンコードでも同様。
1080p(フルHD)の映像をH.264エンコードするのは、
まだまだ汎用プロセッサには荷が重い作業。
消費電力や機器のコストを考えれば、
リッチな自作マニアでないと、
エンコ用ASIC搭載したBDレコーダー同様の機能を
PC録画で実現するのは不可能。
LEADTEK¥ 27,470 |
②ハイビジョン画質対応のロケーションフリー
ハイビジョン対応ロケーションフリーといっても、
ソニーのロケフリHD(LF-W1HD)のことではない。
LF-W1HDはデジタル無線通信方式なので、
WANとかLANとかイーサネットにはまったく関係ない。
「まねきTV事件」に配慮しつつ、
技術的にはフルHD対応できることを示したオナニー・アプリケーションに過ぎない。
ロケーションフリー機器で、
ハイビジョン画質で見れるのは、
現在のところ
SlingBox PRO-HDのみ。
これとて、1080i(1980x1080)なのだが、
地上デジタル放送も1080iなので、
リアルタイムでエンコードする分の
画質劣化を考慮しても、「ハイビジョン」と呼んで差し支えない画質だと思われる。
競合製品の
VULKANO FLOWは解像度720x480、
ソニーのロケフリ(LF-PK20)は解像度640×240程度なので、
SlingBox PRO-HDは現時点で
唯一地上デジタル放送の画質に対応したロケーションフリー機器ということになる。