セカンドベストはなんだ?

最善の策が取れなくても良い。最善を尽くすことがダイジ。

『大切なことはすべて君が教えてくれた』は矛盾してるか?

なぜなのだろう?
『大切なことはすべて君が教えてくれた』という、ちょっとおかしなタイトルに、妙に気を惹かれてしまうのはなぜなのだろう?

あらすじ

『大切なことはすべて君が教えてくれた』は、フジテレビ系列で、2011年1月17日から戸田恵梨香・三浦春馬W主演で月9枠で放送されているテレビドラマ。

大切なことはすべて君が教えてくれた - Wikipedia

高校教師・上村夏実(戸田恵梨香)は、同じ学校に勤める教師・柏木修二(三浦春馬)と婚約している。ある日、柏木修二(三浦春馬)は教え子の佐伯ひかり(武井咲)とセックスしてしまう。バレないか冷々している柏木修二(三浦春馬)をよそに、佐伯ひかり(武井咲)は上村夏実(戸田恵梨香)にチクりそうでチクらない、でも少しチクる。
「先生はわたしと寝て、変わった?私は変わったよ。先生が変えたんだよ」
佐伯ひかり(武井咲)は、柏木修二(三浦春馬)にそう言い残して去って行った。それを影で見ていた上村夏実(戸田恵梨香)は…。

感想

エロい。あらすじからしてエロい。エロいことは良いことだ。
伊豆の踊子』も『雪国」もエロ〜いストーリーの上に、人情の機微を描くから売れた。


ただ、武井咲より戸田恵梨香のがはっきりいってカワイイ!(と思う)
この脚本で戸田恵梨香のような好感度・美人度Sランクの女優を使うのはミスキャストだと思う。
あとAKB48篠田麻里子が、「あれ?」と思っちゃうほどカワイクない。
AKBのなかだとあんなに輝いているのに、この劣化っぷりはなに?
フジテレビのドラマ班のメイクが似合わないのかも。

『大切なことはすべて君が教えてくれた』という命題は矛盾しているか?

『大切なことはすべて君が教えてくれた』という命題(テーゼ)について考えてみよう。
反例がひとつでも存在すれば、この命題は成り立たない。
すなわち、「君以外から教わった大切なこと」があるならば、『大切なことはすべて君が教えてくれた』は論理的に破綻する。
「君以外から教わった大切なこと」は、たぶんありそう。
つーか、あるに決まってる。『君』に出会う前から生きてるんだし。
よって、このドラマのタイトルは、どーみても矛盾してます。Q.E.D.

排中律だった場合

もし、ドラマのタイトルに省略法が用いられ、実は排中律だとしたら、どうだろう?
すなわち、『大切なことはすべて君が教えてくれた(もしくは君から教わっていない)』という命題こそが、このドラマのタイトルだとしたら・・・?
屁理屈っぽいけど、これなら成り立ちそうだ。
だって、「君が教えてくれたか、それ以外です」っていうんだから、間違いない。

排中律とは?


次の命題 P について考える。
ソクラテスは死ぬ」
この命題に対して、排中律とは、
ソクラテスは死ぬかあるいは死なないかのどちらかである」
という命題 P ∨ ¬P が成立する、という規則である(それ以外の第三の状態や中間の状態を取らない) 。

排中律 - Wikipedia

排中律が成り立たない場合

小学生の口喧嘩だと、無敵っぽい「排中律」だが、じつは「排中律」が成り立たない場合がある、らしい。
なぜならWikipediaにそう書いてあるから。(´・ω・`)
まあ、この灰皿とテキーラはサービスだから、まず飲んで落ち着いて欲しい。
ここから怒濤の引用。

一般に、直観主義では有限な集合に関して排中律の適用を許すが、無限集合(例えば、自然数)に対しては許さない。

排中律 - Wikipedia

直観論理あるいは直観主義論理とは、従来の論理学(古典論理)は全てのものの真偽が明確になる「神の論理」であるとして、もっと慎ましやかに人間の立場の論理学を考えようということで提唱されたものである。
(中略)
現代的な説明
ハイティング (Arend Heyting) の流れを汲む説明をすると、直観論理というのは、真偽値が『完備ハイティング代数(cHa - complete Heyting algebra)』の値をとる論理学である。cHaにおいて各要素にその補要素が必ず存在する場合、それは完備ブール代数(cBa - complete Boolean algebra)になるが、特に{0,1}という2要素のみからなるcBaを真偽値とするのが古典論理ということになる。つまり古典論理は直観論理の特別な場合にすぎないのである。

直観論理 - Wikipedia

ゲーデル不完全性定理

排中律への別の反例として、ゲーデル不完全性定理でも、排中律が否認されている、らしい。
ゲーデル不完全性定理(incompleteness theorem)」といえば、「アロウの不可能性定理(impossibility theorem)」、「ハイゼンベルグの不確定性原理(Uncertainty principle)」と並んで、「名前だけは有名で、なんとなく知ってるつもりで、ちっとも理解できてない」アレ*1


ゲーデル、アロウ、ハイゼンベルグ…これらを人と対面で口にするようになったら、立派な大二病。下手に図書館で勉強でもしようものなら症状は悪化。最善の治療は街に出て肝臓の限界まで飲み明かすことだ。そして、横断歩道のシマシマを見てゲロを吐きながら、「そういえばサルトルの『嘔吐』で似たようなシーンがあったな」なんて思いながら、再びゲーゲー吐ける頃には晴れて「快癒に向かう者」になってるだろう。


さて、話題をゲーデル不完全性定理に戻そう。
なぜ排中律が否定されるのか?

第1不完全性定理
自然数論を含む帰納的に記述できる公理系が、ω無矛盾であれば、証明も反証もできない命題が存在する。

ゲーデルの不完全性定理 - Wikipedia

「証明も反証もできない命題」とは、まさしく排中律の反例。
では、ω無矛盾とは?
ぐぐっても分かりやすく解説したページが見つからないし、wikipediaの記述では私には理解できない。 →今ここ


ひとまずω無矛盾をペンディングしておこう。
では、ゲーデル不完全性定理を踏まえると、
脚本家が意図した本当のタイトルが『大切なことはすべて君が教えてくれた(もしくは君から教わっていない)』だとしても、排中律なので成り立たないのか?
実はこれまた違う。
なぜなら、ゲーデル不完全性定理が証明したのは、あくまで数学の世界のお話。(自然数論の不完全性定理
実は、ゲーデルは「述語論理の完全性定理」もしている。*2

ゲーデルの完全性定理

「述語論理」とは何か?
その理解を試みたが、またしても私の理性の限界に達してしまった…
誤解を恐れずに超文系な定義をするならば、「述語論理」とは「私たちが普段話している言葉の構造を細かく分析することで、話し言葉さえも記号化した記号論理学の世界」である。
もっと簡単にいえば「話し言葉を対象にした論理学」と言ってしまっても良いと、今の私は一知半解した。


「大切なことはすべて君が教えてくれた」という命題が、述語論理にあたるのは間違いない。
もし述語論理の概念を用いないと、「大切なことはすべて君が教えてくれた」の否定が、「大切なことはすべて君が教えてくれなかった」(全否定)なのか「ある大切なことは君が教えてくれなかった」(部分否定)」なのか、区別ができない。
『すべて』という言葉を論理的に表す全称記号「∀」を導入することで、「大切なことはすべて君が教えてくれた」という命題を記号論理学で正確に検証することが可能になる。
すると先述の排中律より、『大切なことはすべて君が教えてくれた(もしくは君から教わっていない)』はやっぱり成り立つということになる。

ゲーデル数化

ゲーデル不完全性定理自然数論の世界で成り立ち、完全性定理は述語論理の世界で成り立つ。
では、自然数の世界と話し言葉(述語論理)の世界、どちらが「より広い」世界なのだろうか?
おそらく数字より言葉の世界の方が豊かで広いハズ!というイメージがあると思う。


しかし、ゲーデルによれば、自然数の世界は話し言葉の世界よりずっと広い、
というか、話し言葉の世界は自然数の世界の一部として組み込まれているのだという。
どんな言葉も「ゲーデル数化」という手続きによって自然数に変換できるため、話し言葉の世界はすべて自然数の世界に含まれているという理屈だ。
考え方のイメージとしては、電気のオン・オフ(0と1)という2種類の値の組み合わせに過ぎないコンピュータが、メールから今晩のオカズまであらゆる情報を表すことができるのと同じ。(という説明がよくされている)

ゲーデル数化しとく?

ここで、不完全性定理と完全性定理の関係をもう一度整理すると、「自然数論では不完全性定理が成り立つが、その自然数論の中でも述語論理の世界では完全性定理が成り立っている」という入れ子の構造になっている。


コンピュータのエンコードと考え方は一緒、といわれると急に分かった気になる「ゲーデル数化」。
例えば「不完全性定理のなかに完全性定理が成立している」というのも、
「0と1にエンコードされている自然数の世界では不完全性定理が成立しているが、人が理解するために話し言葉にデコードされると完全性定理が成立する」
といった具合に理解できる。
だけど、「ゲーデル数化」そのものはやっぱクソ文系には理解できないし、そういうあやふやなイメージのままだから、ドゥルーズ=ガタリのコード化(エンコード)・脱コード化(デコード)って用語も理解できないままだったんだな、と反省。

眠れぬ夜のためのまとめ

  1. 『大切なことはすべて君が教えてくれた』は矛盾している
  2. 『大切なことはすべて君が教えてくれた(もしくは君が教えてくれなかった)』が本当のタイトルだと仮定すると、矛盾しない
  3. ただし2.は排中律であり、直観論理や自然数論の世界では否定される可能性がある


これで、いったん区切りが着いたように思える。
長くなったので、続きは次回。

参考

漫談風に書かれているので、読み進めやすい。
このテーマに興味があるなら、入門書としておすすめ。

高橋 昌一郎¥ 777

ゲーデル不完全性定理をもっと粘っこくkwsk知りたい!しかも分かりやすく!」という向きにはコチラはいかが?

結城 浩¥ 1,690

*1:「三大毒電波理論」なんて揶揄されるときも

*2:ちなみにゲーデルは当時23歳だったそうな。恐ろしい子!