セカンドベストはなんだ?

最善の策が取れなくても良い。最善を尽くすことがダイジ。

鴨長明もM・ウェーバーも「選択と集中」が大事だって言ってる気がする。

概要

  1. 若いうちは好奇心旺盛で、色々なことに手を出したがる
  2. 人が生きられる時間は限られている。ってか短い。
  3. 「やりたいこと」を絞り、集中せよ

順序とは?

  1. 例えば(A,B,C)という組み合わせを、A→B→CやB→C→AやC→A→Bのように順番を決めること
  2. 物事は順序によって、効果や効率が大きく変わる
  3. 何かをする上で、順序を考えることは非常に大切
例「時間のかかる事を先に仕込んでおく」

カレーライスをつくるとき、カレーを作る前にご飯を炊いておく。
家に帰ったら、エアコンやコタツをつける。
なぜか?
ご飯が炊き上がるのも、エアコンで部屋が暖まるのも、時間がかかる。
時間がかかる事を先に仕込んでおくのが効率的だから。


「時間のかかる事を先に仕込んでおく」という方法は、たしかに有効。
しかし実際には、たいていの物事は複雑な依存関係があり、そう簡単にはいかない。
例えば、家に帰ったらまず「うがい・手洗い」をすべきだろう。
うがいは時間はかからないが、家に帰ってすぐにやらないと感染予防の効果がないからだ。

複雑な状況での最適な順序を見つける方法論

「うがいは家に帰ってすぐにしないとダメ」、「玉ねぎを炒める前には、切っておかないとダメ」などなど、
各種順序の依存関係を考慮すると、最適な順序は簡単には見えづらくなる。
そのためのツールとして、「ボトルネック」や「制約条件の理論」など様々な考え方が生まれた。

何から手をつけるべきか?

あらゆる物事で、順序を考えることは重要。
だが、人生においてより大切なことは、
「カレーライスの作り方」のような1つの手続きを最適化することよりも、
「そもそも、何をすべきか?何から手をつけるべきか?」
という根本的な問題を考えておくべきだ。

"Just Do It!"は本当に正しいか?

日産のゴーン社長は、朝、オフィスに来たら、その日の仕事をリストアップし、優先順位をつけることからその日の仕事を始めるそうだ。
順序には色々な考え方があるが、やるべき事が決まっている場合には、ゴーン社長のようにシンプルな優先順位は賢いやり方だ。
あれこれ最適な順序を考えているよりも、さっさと始めたほうがたいていは効率的だからだ。
「あれこれ悩む前に、まず行動」、「案ずるより産むが易し」、「Just Do It!」という格言は非常に現実的。


だがその一方で、人生という大きな視点で考えると、「Just Do It!」では困ったことになるかもしれない。
人間が生きられる時間は限られている。
「Just Do It!」と信じてがむしゃらに生きても、「本当にやりたいこと」に手をつけられずに死んでしまうかもしれない。

人生における「順序」とは?

徒然草の188段で、こんな話がある。
昔、立派なお坊さんになろうと決心した人がいた。
将来式典などに招かれた時、馬の乗り方が下手だといけないと思い、まず乗馬を習うことにした。
乗馬の次は、檀家さんにモテるために芸を身につけようと思い、カラオケを練習をすることにした。
そして乗馬も歌もそれなりに上手になったころにはすっかり老いぼれてしまい、
肝心の仏教の勉強ができず、立派なお坊さんにはなれなかった。


逆に、こんな人の例もあげている。
和歌が好きな人が、あるとき「ますほのすすき、まそほのすすき」という秘伝があり、その秘伝を知っている人がどこそこにいると耳にした。
それを知ると、雨が降っているにも関わらず、すぐに出かけ、秘伝を聞くことができた。


当時、雨に濡れることは禁忌だったという古典常識を踏まえると、とんでもなくせっかちな行動力だったのだろう。
そして、「敏なれば則ち功あり」*1という論語の言葉を引用し、188段を結んでいる。


この188段で、鴨長明は2つのことを説いているように思える。
ひとつは、人生で何かを成し遂げたいならば、「選択と集中」が不可欠だということ。
そして、ひとたび専門分野を「選択」したならば、最優先で取り組むべきということ。

選択と集中」あってこその「Just Do It!」

徒然草の例でも、乗馬と歌は上手になれたが、本来の仏道修行は極められなかった。
何かに熱中することは良いことだが、若いうちほど目の前の事々に目を奪われて脇道にそれてしまいやすい。
だからまず一番大切なことは、「自分は何をしたいのか?」という専門・専攻を決めることにあるのだ。
そして、「選択と集中」ができて、初めて「Just Do It!」というポリシーが有効になる。

似たような話の例

マックス・ウェーバー

マックス・ウェーバーの「職業としての学問」でも似たような話がある。
「職業としての学問」は、マックス・ウェーバーが学生(当時はがっちがちのインテリ階級)にした講演がもとになっている。
その中で、「自分の専門外に安易に手を出すな」、「自分の専門を極めろ」という主張が繰り返されている。

バケツの中身をいっぱいにする方法

セミナーや自己啓発でよく聞く話に、バケツと小石の話がある。
バケツにできるだけたくさんの石を詰めようとするなら、まず大きな石から入れないといけない。小さい石から入れると、大きな石が入りづらくなってしまうから。
大きな石とは、すなわち自分の意志であり、一番何をしたいのかをまず決めなければ、それを達成することはできない。


また、バケツが石でいっぱいになっても、まだ砂粒を入れることができる。
砂粒でいっぱいになっても、さらに水を入れることができる。
このことは、「小さいことは工夫次第で後からでも成し遂げられるから、大きな石を最優先しろ」という解釈と、
「石をいっぱいに入れたつもりでも、まだまだ詰めることはできるから、ひとつのバケツを貪欲に追求しろ」という2通りの解釈ができる。

*1:すぐに実行すれば、成功する。論語 堯曰第二十 507より